八ッ場ダムについて

・利根川上流の吾妻渓谷に、巨大なダムがあります。
・名前は「八ッ場ダム」(やんばダム)です。

・このダムは、重力式コンクリートダムで高さ131m、68年の年月をかけ、約5320億円で2020年3月に完成した国のダムです。

・このダム建設で激しい反対闘争の歴史があったことを知らない日本人が多いと思います。

・そのことをお知らせします。

 音声で聞く

・今から70年程前の1952年(S27年)、建設省によって「八ッ場ダム」の建設が発表されました。

・その目的は、大型台風の水害から利根川流域を守ることと、
・首都圏の生活用水や工業用水を確保する多目的ダムの建設でした。

・しかし、ダム建設で水没する地域住民の激しい反対運動が起こります。
・水没人口1170人、470世帯が高台に移動しなければなりません。

・特にダム建設に激しく反対したのは、川原湯温泉の人たちでした。

・その反対闘争は、その後に続く成田空港の三里塚闘争(1966年~)と同じで、反対に共鳴する全国のオルグたちも結集し、まさに吾妻渓谷は、建設側と反対側の戦場の場となりました。

・その反対闘争は、70年代まで、約10年間以上続いたのです。

・1992年、反対住民側は、反対運動の旗を降ろしましたが、水没予定地に残る最後の住民の一人が移転契約に調印したのは、2016年2月でした。

・この八ッ場ダム建設は、水没する住民と建設する国側の紛争だけでは収まらなかったのです。

・この問題が、朝日新聞で取り上げられると事態は一変します。

・吾妻渓谷の自然を破壊するな。
・巨大な建設費をかけて負のダムを造るな。
・住民の生存権を守れなど、世論は沸騰し、周辺自治体や与野党も巻き込み、ダム推進派と中止派が激しく論戦しました。

・さらに水没予定地の住民が、推進派と反対派に分裂して争った悲しい歴史もおこりました。


・2009年、民主党政権下「前原誠司」国交大臣は、八ッ場ダム工事の中止を表明し、国土交通省は八ッ場ダム本体工事の入札を凍結しました。

・これで多くの国民は、この問題を抱えた「八ッ場ダム」は建設されないだろうと思った。

■・しかし、保証を受けていた水没住民側が中止により不利益を受けることになり、今度はダム建設中止の反対運動を起こした。

・2012年12月、自公政権が復活して「八ッ場ダム」の推進が始まった。
・2015年1月、 国交省は、ダム本体建設工事を開始した。

・こうして、移転住民も国内世論も政党も2つに分断した歴史を持っている「八ッ場ダム」は、2020年3月に完成します。

・長い年月をかけ、日本のダムの中で一番高い建設費をかけたダムは、そんなことを忘れたように、今は吾妻渓谷の観光名所となっています。


■・いろいろな主張と解釈がありますが。私はこうとらえています。

・建設計画の当初、建設省は水没住民に丁寧な説明をぜず一方的な 態度を取ったこと、このことで水没住民は移転後の生活に不安をいだき、激しく抵抗した。このことがすべての原点です。

・朝日新聞を始めマスコミは、大局を見ず反対運動をあおった。
・このマスコミのあおり行為は、大罪に値します。

・大局とは、1947年9月、カスリーン台風が日本に上陸し、利根川堤防と荒川堤防が決壊して関東平野に大洪水が起きました。

・建設省は、この台風被害の教訓から関東平野の氾濫を防ぐ目的で、利根川水系と荒川水系にダムを建設する計画が起こり、八ッ場ダムもその一つでした。

■・今、地球の温暖化が進み、毎年のように異常な雨と巨大台風が日本列島を襲います。

・山国日本の短い急流の河川は、ひとたび大量の雨が降れば下流の地域は、すぐに氾濫原となります。

・それを防ぐ具体策の一つには、ダムを建設し防ぐ必要があります。

・八ッ場ダムは、完成した2020年3月の直後、台風19号が記録的な大雨を関東地方に降らせました。

・ダムは、一夜にして満水の水を湛えて下流の関東平野の反乱を防ぎました。

・もし八ッ場ダムがなければ、この台風で東京の荒川・江戸川は氾濫をしていたと言われます。

■・民主党政権下の蓮舫大臣は、このダムは無駄なダムであると仕分け作業で切り捨てました。

・蓮舫議員は、この結果に何と言っているのか、蓮舫議員からの声が聞こえてきません。

・異常気候のこんにち、このダムの建設が無駄だったのか有益だったのか、やがて証明されることだろうとおもいます。

■ 2021年11月 完成した「八ッ場ダム」を見にいきました。

・吾妻渓谷に建設された「八ッ場ダム」は、やはり巨大なダムでした。

・しかし、なぜか周りの渓谷の紅葉とマッチして融合していました。

・満々とたたえる湖の水と渓谷の紅葉は美しく多くの観光客が訪れていました。

・わたしは、巨大なダムを見上げながら、

・水没した地域の住民が賛成と反対で分断し争い合ったことや、

・巨大ダム建設の利権に群がる人々のことや、

・この巨大ダムをつくった建設技術者の力量などを考えていた。


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